内閣府認証NPO法人 Green Help Japan (GHJ)

宝塚歌劇から想像出来る世界 [29]

2010年12月10日

NPO法人グリーンヘルプジャパン

代表理事 近藤和子

 

宙組
主演・・・大空祐飛、野々すみ花
ミュージカル
『誰がために鐘は鳴る』
原作/アーネスト・ヘミングウェイ
脚本/柴田侑宏  演出/木村信司

 

[解 説]抜粋

 

ヘミングウェイの原作、そしてゲーリー・クーパーとイングリッド・バーグマンの映画で知られている名作「誰がために鐘は鳴る」が、宝塚歌劇により世界で 初めて舞台化されたのが1978年。宝塚歌劇では異色の作品ながら、大好評を博し、今回は、初演の脚本・演出に、ミュージカルとしての新演出も加えながら の再演となった。

 

1936年、アメリカの大学講師ロバート・ジョーダンは、義勇兵として内乱のスペインに赴く。渓谷にかかる敵の橋梁爆破という大きな任務を命じられたロ バートは、山中のゲリラの拠点で少女マリアに出会う……。最前線の山にこもるゲリラたちの人間群像、そして極限状態におけるロバートとマリアの愛の美し さ。四日間の息詰まるような人間模様が描かれている。

 

「想像出来る世界」

 

今回は再演ですが、何時も、何故、再演するのかという事について……興味がありますが、今回は、観劇する前に、原作者のアーネスト・ヘミングウェイについて知りたくなり、世界人名事典で調べました。

 

想像したことを書く前に、事典に書いてあることを載せることにしました。何故なら、原作の中を流れる思想を知らずに、この作品の事を語る事は難しいと考え、少し長くなりますが、記されているままを載せます。

 

◎1899~1961 アメリカの作家。

 

1917年カンザスシティーの『スター』紙の記者となる。半年で退社したあと、イタリアの戦線で傷病兵運搬車の運転手となり、1918年自らも脚に重傷 を負う。帰国後の1921年に8歳年上のハドリー・リチャードソンと結婚。同年新聞特派員としてヨーロッパへ渡り、詩人ガートルード・スタインらと出会っ てから作家修行を始める。1924年パリに居を移し、ジェイムズ・ジョイスなど若いアメリカの作家らと親交を結ぶ。1925年処女短編集『ワレラノ時代 ニ』で文壇デビュー。翌年小説『日はまた昇る』を刊行し、一躍、失われた時代の代表的な作家となる。平易な日常語を駆使する新しい文体で、人生の不合理や 死に立ち向かう勇敢な人間の姿を非情な叙情性をもって描写した。1927年離婚。同年再婚。1944年記者としてノルマンディー上陸作戦に参加。1953 年『老人と海』でピューリッツァー賞を受賞。1954年ノーベル文学賞を受賞。1960年に移住。うつ病とノイローゼを患い、1961年銃口を口に当て、 自殺した。

 

「著」『武器よさらば』1929年・『午後の死』1932年・『誰がために鐘は鳴る』1940年。フルネームは、アーネスト・ミラー・ヘミングウェイ。
と書かれています。

 

この作者の一生を知り、1978年の今から32年前に、宝塚歌劇により世界で初めて舞台化されたという、この『誰がために鐘は鳴る』という今回のミュージカル。

 

1940年に書かれてから、70年目となる。

 

私が生まれる前……、この地球には何千年という人間の歴史が刻まれている。その間、どれほどの争いを繰り返し、殺しあって来たことかと考えますと、どんなに、科学が進歩しても、人間が判断する争いの思考を、低負荷型に変える事はまだ成功出来ていないように思えます。

 

今からの将来には、可能だという事が出来るのでしょうか? 難しい問題です。

 

舞台を観ていますと、イスラムの模様が気になったり、現在のテロやアフガニスタンの戦いを想像したり、最近の数々の負のニュースがリンクしてきたり、複雑な気持ちが去来して、思考が深まり、観劇しながら、いろいろな事を考えました。

 

そして、舞台上では、4日間という短く限られた中で、繰り広げられる物語を、宙組一丸となっての迫真の演技には感動します。観客席からはすすり泣く声が 目立ちました。主演の大空祐飛さん演じるロバート・ジョーダンの何重にも重ね持った心の動きは、人間の感情と責任、心理……うまく言えませんが、人間が生 み出せる表現すべてをフル活用することを要求されているような気がしました。悲しみも、怒りも、喜びも、寂しさ、すべてがバランスよく全開する演技が求め られているようで、作者の人生経験の深さからくる洞察力と思想表現の技術の深さを感じます。

 

その中で咲く、可憐な一輪の花のように感じる少女、マリアを演じる野々すみ花さんの神に通じるような澄んだ心には、安らかな気持ちが生まれてきます。そ して、今回で退団される専科の星原美沙緒さんの更に奥深い感情と責任感が重なり合う戦って来た男の重厚さにも感動しつつ、最後の舞台を大切にされている思 いがしみじみ伝わってきます。また、専科の京三紗さんの情熱溢れる女性リーダーとなって戦う演技中で、すべての感情を使い切り、魂の叫びとも取れる力強い 演技の中から、若い生徒さん達をリードする責任と星原美沙緒さんを送り出す思いが、愛の光のようになって舞台を包み込んでいるような気がしてきたのも印象 的でした。そしてまた、今回の一人一人の演技のすばらしさは、観劇している人たちの脳裏にしっかりと刻まれているような気がしております。こんなにも舞台 を大きく感じさせるこの作品が持つものは何なのでしょうか?生徒さん全員の演技力と、この脚本に関わられた先生方の演出能力なのか……?

 

今、世界中で争いが続いている。その争いで命を亡くす人たちも多い現実を、日本に生きて、感じ取ることは希薄でしたが、この作品を観劇したことで、神経 のどこかが、目覚めたような気がし、複雑な人生観を背負ったこの作品。国と国との利害・思想から生まれた争いの中で、犠牲となっていく国民。割り切れない 思いが迫ります。