内閣府認証NPO法人 Green Help Japan (GHJ)

2006年頭にあたり 総合科学技術を基礎とした時代を支えるNPO法人の果たすべき役割

2006年工業科学新聞掲載論文-近藤和子記
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内閣府認証NPO法人グリーンヘルプジャパン
代表理事 近藤和子

 

新しい年を迎え、お喜びを申し上げます気持ちと、今年こそは日本にとっても世界にとっても平穏で未来が明るくなるような年になりますようにと思う願いの気持ちが複雑に入り交じる新年でございます。

 

長い間低迷を続けていた日本経済もここに来てやっと上向きになって来ているようで喜ばしいことと思い過去数年間に進められてきた「痛みを伴う改革」の成果だと高く評価されても良い事ですが、その一方で、NPO活動をしている者の立場から考えてみますと、国民みんなが、この景気回復の恩典を受けることが出来るのかについては疑問であり一抹の不安を感じます。

 

どうしてこのような事を考えるのかと言う事について、考えを述べてみたいと思います。企業が進めて来た改革はいろいろありました。コストダウン、経費の削減、ITの整備、品質の向上、ベンチャー化は避けて通れない事項でした。

 

そして、社会全体としての改革の成果は上がり、従来の景気対策と政府のてこ入れではなく、各企業努力によって、待ちに待った景気の回復という目標が達成出来たと認識しております。 21世紀は個が目覚めると言われてきた事が苦しみの中から生まれて来ているような気がしています。

 

しかし、その反面急速な社会の変化について行けなかった人々が沢山出来ているという事も、景気が回復しつつある時に、社会全体の責任として真摯に受け止め、切り捨てられた人々に対して、その場限りの解決ではなく、日本社会の将来を見すえ、根本的な所から正しく受け止めた対策を進める事が、必要であるように思います。

 

いろいろな問題を切り捨てて、身軽になりスッキリしたように思えても、社会の構成は成功者だけのものではなく、切り捨てられながらも生きようとしている人や生きることの努力を止めた人達、病気になった人達も同じように選挙権を持ち社会を構成している一員であり、形は違っても、何らかのエネルギーで社会に影響しているという事を激動の時代だからこそ、決して置き忘れてはいけない時であると考えます。

 

お料理に例えますと、食べれたら良い、見た目が良ければ良い、味が良ければ良いとされる時代から、実はその食材にはいろいろな栄養素が含まれている事を調べる科学が進み、効率的な摂取方法である健康補助食品が作られ、健康ブームも起きて来ている時、ビタミン・ミネラルの多量摂取による弊害が解明され、更には、その食材に含まれる微量な物質が健康を害する働きをしている事も、1兆分の一という微細な単位を科学して、こうした物質を簡単に検出する機械が作られました。

 

そうなると、今までの概念である、小さな、微細な事は大したことではないという考え方では間違っている事になります。

 

今起きている公害問題はこうした微細な世界が引き起こしているという認識をする事も大切なのです。科学技術の進歩により、物質や自然界のメカニズムは想像の域を脱して、本当の仕組みを突き止める事に成功しました。その結果、人間を構成している細胞という微細な組織が構成している要素が、健康を支配しているという事も解明されてきました。そうなると、健康を求める人々はこの目で見ることの出来ない、微細な世界を基本とした考え方をするようになって来たのです。

 

今までの社会の事を考えますと、国を守り、育てるはずの政治の世界に、お金を求める人が多く群がり何をするにも、国のお金を当てにするという傾向が強い人々を育ててきた今までの日本の政府は、今からはいろいろな改革を進め、国民に対してきめの細かい行き届いたサービスが出来るように、小さな政府を目指して変身しようとしています。

 

この小さな政府の中には今までのようにお金や地位名誉を大切にする人達だけではなく、国が定める17項目のボランティア活動を支援しながら、営利を目的としない「働いて食べる。生きる。社会貢献をする」 という考え方の人達も共存出来るような社会にしていただきたいと願いたいです。

 

国は、こうした意向を受けて、ボランティアの団体である特定非営利活動法人(NPO)という法人制度を作り、NPOの活動拠点が1つの都道府県に止まる場合は都道府県の認証とし、2カ所以上ある場合は内閣府の認証を受けるように決めています。

 

現在設立されている特定非営利活動法人(NPO)の数は都道府県認証が22362法人で、内閣府認証は2012法人です。政府は17分野のNPO活動を定めています。そして、国が定める活動分野17項目の内容や分野別届け出比率、法人が届けている分野の数は左記のようになっています。

 

定款に記載された特定非営利活動の種類

第1号 保健・医療又福 祉の増進を図る活動
第2号 社会教育の推進を図る活動
第3号 まちづくりの推進を図る活動
第4号 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
第5号 環境の保全を図る活動
第6号 災害救援活動
第7号 地域安全活動
第8号 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
第9号 国際協力の活動
第10号 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
第11号 子どもの健全育成を図る活動
第12号 情報化社会の発展を図る活動
第13号 科学技術の振興を図る活動
第14号 経済活動の活性化を図る活動
第15号 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動

第16号 消費者の保護を図る活動
第17号 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動

 


分野別 法人数 割合(%)
1号 13414 56.8
2号 11117 47.1
3号 9437 40.0
4号 7567 32.1
5号 6815 28.9
6号 1546 6.5
7号 2172 9.2
8号 3605 15.3
9号 5078 21.5
10号 2128 9.0
11号 9328 39.5
12号 1632 6.9
13号 811 3.4
14号 2172 9.2
15号 2647 11.2
16号 967 4.1
17号 10499 44.5
(2005/09/30までに認証を受けた23608法人の定款から集計)



法人が定款に記載している分野の数

分野数 法人数 割合(%)
1個 4024 17.0
2個 4292 18.2
3個 4361 18.5
4個 3532 15.0
5個 2618 11.1
6個 1694 7.2
7個 1115 4.7
8個 664 2.8
9個 405 1.7
10個 227 1.0
11個 153 0.6
12個 281 1.2
13個 50 0.2
14個 28 0.1
15個 21 0.1
16個 14 0.1
17個 129 0.5
(2005/09/30までに認証を受けた23608法人の定款から集計)



以上が現在の状況です。数は年々増える傾向にあり行政も協働という形を模索しながら、社会に根付く確実な法人に育つ協力をしていますが、一人の政治家や宗教団体、暴力団との癒着を禁じているこのNPO法人が育つ方向は、法人を作り活動している人々、自らが考え模索して小さな政府に適応出来、対等の立場で、国民や社会の問題をサポート出来る実力を付けることであると考えます。


今、新しい時代が生まれていますが、その変化を、根本からリードしているのは目で見ることが出来ない微細な世界の科学技術であると言っても過言ではないように思います

この事を裏付ける内容の一つに「第3期科学技術基本政策」の答申案の内容を挙げることができます。

 

その内容とは、第3章科学技術システム改革。1.人材の育成、確保、活路の促進。(1)個々の人材が活きる環境の形成。①公正で透明性の高い人事システムの徹底。(3)社会のニーズに応える人材の育成。2.科学の発展と絶えざるイノベーションの創出。

 

3)イノベーションを生み出すシステムの強化。⑤民間企業による研究開発の促進。第4章の社会・国民に支持される科学技術。第5章の総合科学技術会議の役割。2.具体的取組。③社会・国民に支持される科学技術。という部分と、今回は科学技術社会に於けるNPO法人の役割が盛り込まれている点に注目し、改革を進めている政府の姿勢を感じ取れます。

 

岸壁から船が離れるように時代は変化を始めていると考えることが出来ますが、今まで私が理解してきた事を順を追って書きながら気持ちを新たに、NPOという立場から出来る役割を認識したいと考えます。「人と自然にやさしい」という基本法の基に各省の基本法は作られて、改革は進められています。

 

例えば、2000年に政府は「科学技術創造立国」を目指す事を宣言しました。 その技術はナノテクノロジーという10億・100億分の一というような微細な単位を基本とした科学であり、今まで認められていなかった総合科学の世界だと言うことも認知しました。

 

この新しい学問である総合科学の推進には内閣府に、各省より一段高い立場から指導出来る内閣総理大臣を中心とした「総合科学技術会議」が設置され、1期で約24兆円の予算が組まれて来ています。今年からは3期になります。この分野での改革は環境・情報・医療・ライフサイエンスとするということが決められています。

 

人間が思考する世界を科学と定めたこの内容は、今まで慣習とされてきた多くの事柄における、定義や概念、人生の目的や目標、倫理に対して、大きく影響する事となり、ここでも負け組、勝ち組という言葉で二分化されるような社会になって来ているのです。

 

今までは文系と理系とに分けていた思考の考え方を科学技術の基本法のもとに科学で統合し、その結果社会は大きく変化することとなりました。低迷していた日本社会を元気にするためにも、21世紀という新しい時代に向うためにも、この総合科学技術による改革は必要不可欠なものであったことを今ここで国民の個々が認知する必要があるようです。

 

痛みを伴う改革と言われている中に、明治維新の時のような生活基盤の根底を変えるような改革が含まれている事をどれだけの人々が自覚しているかという事を考えてみたとき、根底には個々に理解されていない何かが残されているような気がして仕方がありません。

 

今回は平成の維新と言われていますが、バブルの崩壊後から続いた、苦しかった激動の時代の中で、私たちはやっと景気を回復させる事が出来たという現実を迎えた今、誰もが、単純に再び、昔のように安定した社会になり自分たちの生活も安定する事を思い描くのではないかと想像します。

 

しかし、行政改革が進み人々の思考も多様化すると言われている、今の時代の中で、新しく構築されていく社会の中で、自分たちの生活を安定さすということは、今までのようには行かないような気がします。

 

新しい時代は個が目覚めると言われていますが目覚めた個の価値観も当然多様化すると考えたとき、人々は何を求めて、何に価値を見出して、生きて行くことになるのでしょうか?

 

そのためには、これからの時代は個人の責任に於いて、社会の背景を理解し、その中で、誰しもが生まれてきて良かったと言えるような人生にする努力をし、自分の置かれている現実の立場を、理解し認知出来る能力を身につける事を要求されて来るように思います。

 

そのための教育も必要となって来るように思います。

 

社会の多くの人を対象にこの事実をどのように伝え教育して行くのかについては数多くの課題が残されているように考えられます。だからといって、こうした残された課題をそのまま放置しておくと社会の中に知らぬ間に潜行して行き、景気が回復すればするほど大きく膨らみ、社会の格差という様な問題が生まれ、次の世代には簡単には解決出来ない、大きな問題となるのではないかと心配しております。

 

ここで言う心配する内容とは、人間が構成している社会や自然が作り出した世界に取り残された、まだ解決されていない数々の負荷要素のことも含まれております。しかし、こうした問題に関して政府もすでに対策を講じていますが、国民全体の意識までにはまだ達していないのが現実です。逆に、この国民全体に認知させるにはどうすれば良いのか?と言う話になるのではないかと思います。

 

その前に、戦後60年の歴史を振り返って見ますと、終戦後は戦争で失ったものの復興産業の再生という、当面の目標があり、国指導型の、右肩上がりの経済成長に支えられながら国民全体の生活は安定しバブルの崩壊という事態の到来までは、日本経済は明るい未来に向かって確実な歩を進めていると誰もが信じていました。

 

その間使われた言葉に

 

「使い捨て」
「お客様は神様」
「地獄の沙汰も金次第」
というのがあったのを思い出します。

 

如何に、お金が中心の考え方であったかが伺えます。

 

お金を基本とした経済は社会の構造もお金を儲けるための仕組みへと変化し、世の中の流れは、お金を儲けるためには本来の目的も見失う様な歪んだ思考も通るような慣習が生まれ、天下り・談合・ワイロ・トンネル会社・ピンハネというような言葉も、今ではハッキリと悪い事で犯罪的な行為であるという概念が浸透していますが、日本の社会の中で当たり前のような時代があった事もそんなに前の事ではなく、現に今改善がされつつある事柄なのです。官僚・政治家・事業でお金を得た人、高学歴・高いレベルの国家資格を有する人達・・・が今までの日本社会をリードしてきました。こうした有能な頭脳の人達が存在したにもかかわらず成長を続けた日本経済の陰では誰が聞いてもおかしいと思う事が平然と出来る社会になってしまっていたのが事実なのです。

 

痛みが伴う改革が行われていた時代に、こうした膿と化した部分の構造改革もされてきた事も忘れてはならないと思います。そして悪いことをしていなかった人までがこうした改革で犠牲となっている事も事実です。そして現在は、悪いことを阻止する法律もいろいろと出来てきています。

 

このように、今の日本社会の中では、格差が複雑化しており、フリーター・ニートという若者が生まれて来て社会問題となっておりますが更にはこの複雑化した社会の負け組だと、簡単に片付けられないのが、精神疾患者・自殺者が増えていることです。その反面では悪質化する犯罪行為が増えている事実を知り、早期の解決を期待します。時代が変わる時には混乱は避けられないと考える人もおられると思います。

 

比較的、早いスピードで改革が進んで来ている背景には、科学技術の進歩によるところが大きいと言えるのではないでしょうか?

 

1995年頃に電子顕微鏡が開発されました。その結果、今まで見ることが出来なかった微細な世界を目で見ることが出来るようになり、想像していた事が現実化し今までの間違いがハッキリする事となり、修正されるという事になって来ました。

 

例えば、細胞一つでも、それまで分からなかった核(DNA)・ミトコンドリア・糖鎖の世界の解明が進んだ事で、医療の世界は飛躍的な進歩を遂げています。化学の分野に於いても、触媒による化学反応から電気信号を利用した化学反応の技術も進み、大きな成果を上げているのです。ナノテクノロジーという微細な科学の研究が進んだことにより、イオン化された物質までを検出する事が出来るようになりました。その結果、政府は環境ホルモンや化学肥料・農薬・薬害・公害と言った世界を簡単に管理出来る仕組みを作ることが出来たのです。

 

最近は禁止された農薬を使用している農産物の検査も簡単になり、悪いことが出来なくなっています。薬による薬害・人体に吸収されないで排泄されている公害の実態も明らかになり、生態系保護の立場からも解決が急がれています。そして更に携帯電話だけを見ても分かるようにIT技術の進歩は私たちの生活様式までを変えてしまうまでになりました。事務機能におけるFAX・Eメール・インターネット・パソコン・ソフト・印刷機器・・も目まぐるしい進歩はこの進んだ機能を使えるという事が雇用条件となり、ここでも切り離される人が出て来ていることを認知する必要があります。

 

こうした現状の中で、小さな政府・地方分散型・地域クラスター・地域経済・地域ブランド・地産地消・六次産業・地域ベンチャーというような言葉が生まれ、政府は科学技術基本法の考えのもとに「低負荷型社会の実現」「循環型社会の実現」という目標を掲げておりますが、今までのように、行政に任せていて、実現出来るという内容ではない事もよく分かります。

 

また、企業だけが実現させられる内容ではない事も分かります。今ここで考えられる事は、NPOの活動に参加している人からも、問題意識に目覚め企業とNPOと行政が協働するときが来たように思います。

 

ITと言われていた言葉も今はICTという言葉に変わり、GNAという基準や、自然にやさしくない事をした時は減点するという考え方が出て来たり、農産物の流通に於いても市場経済とは別に地産地消という新しい考え方が生まれ、地域通貨という言葉も、聞き慣れてきましたがこうした世界でのNPOの活躍は大きいと考えています。

 

誰から言われるという訳でもなく、自分が目覚め、自覚して活動するボランティアと収益活動を合わせ持ったNPO法人は新しい時代の担い手として大きな期待が寄せられているのです。



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